【個人投資家取材】元証券ディーラーで株価予想でも活躍中の個人投資家、谷山 歩氏 証券会社のディーリングとは?

【著者】 児山 将



迷走を続けるアベノミクスと日銀の金融政策。独歩高を続けていたマザーズの急落もあり、2016年はますます難しい相場展開となりそうです。
そんななか、元証券会社でのディーラー経験があり、Yahoo!株価予想でも常に上位にランクイン(2015年パフォーマンス4位、勝率3位)している谷山氏に取材をさせていただきました。

知られざる証券ディーラーのお話や、直近で話題になった銘柄の話、谷山氏の相場の見方、投資手法などをざっくばらんにお話してもらいました。

証券ディーラー時代のお話と、今後の相場展望・注目銘柄、投資初心者に向けた優待投資の方法。合計3部に分けてお届けします!(取材日:2016年6月3日)

谷山 歩

谷山 歩

早稲田大学法学部卒。元証券ディーラー、2級FP。
Yahoo!株価予想にて2015年「ベストパフォーマー賞」,「最高勝率」を同時受賞。ブログ「インカムライフ.com」代表。複数メディアにて活動中。
株主優待株や好業績株の値動きを捉えた中期投資に自信。
Facebook ・公式ブログ|インカムライフ.com

証券ディーラーになるまで

-よろしくお願い致します。最初に投資を始めたきっかけから教えて下さい。

谷山さん(以下、敬称略):学生時代に知り合いに投資をしている人がいて、色々と株式市場の話を聞いていました。そこから相場に興味を持つようになりましたね。取引するには至りませんでしたが、誰かがサハダイヤで大きな利益を出したという話を聞いたりして、「株式市場は面白そうだぞ!」と考え、最終的に証券会社に就職するに至りました。

■サハダイヤ(9898)月足チャート
サハダイヤ

-株式ディーラーになるには簡単ではないと思います。そのプロセスを教えてもらえますか?

谷山:私のいた証券会社ですと、株式部というところでディーリングをやっていました。多い時は50名くらい在席していて、かなりの規模だったのではないかと思います。

株式部は監査部や営業部など様々な部署と関わっている仕事もしています。
例えば、営業の委託の注文を受けたり、ディーラーの注文チェックなどを行います。
注文チェックで重要なのは「後取消注文」のチェック。これは、約定した後に下で指している買い注文を消したりしていないかということですね。

そういった仕事もしながら、シミュレーションソフトを使ってディーラーになるための訓練をしていました。このソフトというのは、QUICKとエクセルを連携させて株価がリアルタイム連動して動くようにつくられたもので、いわゆるデモトレードですね。これで、買いと売りを出してデモ注文をできるようになっていました。

8カ月くらい研修した後に、ようやくディーラーになりました。
当時はそういうディーラーになるための登竜門的なところがありましたけど、今は恐らく中途採用で雇った方が効率が良いので、新入社員からというのはあまりないのかなと思います。

知られざる証券ディーラーの世界

-証券ディーラーにも様々な種類があると思いますが。

谷山:ディーラーには正社員、契約社員、コミッションと3種類の契約があります。
コミッションディーラーは超やり手のディーラーで、利益をプールしてどんどん投資資金を大きくしていき、取れるリスクを大きくしていきます。利益がないと投資ができなくなってしまいますので、やり手しか残らないシステム。歩合給もディーラーの中で最も割合が大きめです。
社内でもコミッションディーラーは特別扱いですね。

一方、契約社員は少し固定給がありますが、一定期間、赤字を継続して出してしまうと解雇されてしまいます。契約社員は固定給とディーリングの利益3割程度が給料になるという感じですね。正社員は、割合がもう少し低い2割程度でしたね。

-凄腕のディーラーさんが多数いたと思いますが、トップディーラーはどのくらい稼いでいたのでしょうか。

2007年から2008年にみずほなどの銀行株が動いている時に、稼いでいる人が多かったですね。月に8,000万とか稼いでいる人がいて、早期退職して悠々自適な暮らしをしている人もいました。

証券ディーラーはリアルタイムで他のディーラーの損益が見えるので、私もディーラーになる訓練をするかたわらで彼らの収益を見ていて驚きでした。

ディーリングで稼いだ利益を給料として貰った後に、それをそのまま会社に預け入れて個人資産として株の運用をしている人もいました。
証券会社の社員は6ヶ月間売却できない縛りがあるのですが、1億ほど入れて配当をもらいながら上手に運用している人もいました。

-証券ディーラーの方は、どのような取引をしている人が多いのでしょうか。

谷山:ディーラーはいわゆる肉食系の人が多くて、アキュセラの様な銘柄は扱わないものの、リスクを取るという点ではギャンブラーチックなトレードをするデイトレーダーと似ています。基本的に短期売買が多いですね。
ディーラーは扱う資金が大きいので、板が厚くて動きの堅い銘柄を取引する傾向がありました。やる銘柄を一つと固定している人もいました。

個人は値動きの大きな流れを取ることが多いのですが、ディーラーは反射神経。
例えば、みずほが今3円幅で動いているとします。その時に、日経平均先物が下がった時に レンジの下で100万株指しておいて約定したら、その後の反発で1ティック上で売るという感じです。

これはどちらかというと資金力のあるディーラーのやり方なのですが、このタイプのディーラーになればなるほど、低位株で板が厚くて動きがかたい銘柄をたくさん買って1円、2円を抜く取引をする傾向にあります。
当時はみんなそこを目指していました。

最初はそれほど資金が大きくないので、三菱電機(6503)やリコー(7752)などの2番手銘柄から取引して練習をしていくのですが、最終的には超短期で回転をさせることを目指します。次の日に持越しをするという人は、ほとんどいませんでしたね。

最近はコアな銘柄が0.1円刻みになっていているので、ディーラーの多くは日経平均レバレッジ(1570)やトヨタ(7203)、東京エレクトロン(8035)を取引しているのだと思います。

-リーマンショック後などはどうでしたか?

谷山:意外と儲かっていましたね。当時、私はディーラーではありませんでしたが、2009年などは年金の買いが噂されていて、8,000円付近で日経平均先物が明らかに買い支えられている様なラインがあって取引しやすかったみたいです。
「サーキットブレーカーが掛かったらみんな買え!」みたいな。

-証券会社のディーラーさんは、取引規制が多いと聞きますがどのようなものがありますか?

谷山:まず、当時は買い板に空売りをぶつけることができませんでした。
売り板に空売りを指値して約定するのを待たないといけなかったんですね。
その点、売りに関しては買いよりも不利な点がありました。そのため当時は、ディーラーは買いを中心に行っていた人が多かったような気がします。

また、取引する上で意識しなければいけないことは、関与率です。

割合は忘れてしまいましたが、場中に銘柄の売買代金の何割かに達してしまうといけないですね。
トヨタなどの大型銘柄だと気にする必要はないですが、小型や新興の銘柄だと1億くらいの取引でも、回転させてしまうと関与率が上がってしまいます。

これは簡単に言うと、大きな資金で関与率が高くなると結局は相場を支配することができるようになってしまう。それがまずいということです。

なので、対策としては似たような値動きのする銘柄をピックアップしておいて、ループするという流れですね。取引する市場はどこでも良いのですが、ディーラーの暗黙の了解で東証一部で売買代金の大きな銘柄が多くなっていましたね。

-ディーラーの取引環境はどのようになっていますか。

当時はインタートレードの発注システムを使用していました。これで、東証に直接発注するので手数料は無いに等しいですね。個人投資家とは比べ物にならないくらい安いです。普通個人が300円で買ったとしたら、302円とかになりますが、これがディーラーだと300.3円とかになります。だから1円、2円を抜けるんですね。

タイガートレード
(発注システム)

ちなみに投資情報を仕入れるのはQUICK端末ですね。モニターが平均4枚あって、発注画面が一枚に情報画面が3枚という風になっています。多い人は全部で6枚以上使っていますね。

-ネットを使って他の情報を見てはいけなかったり、インサイダー防止のために携帯の電源をオフにしないといけなかったりしますか。

谷山:そんなことはないですね。
ネットは見れましたし、スマホの電源は切らなくて良い。例えば、Twitterは重要なので今のディーラーさんはtwitter専用の画面を1枚持っている人もいると思います。

-昔は板明細が見れる東証端末というものがあって、それが取引に有利だと聞いたことがあるのですが、実際はどうでしたか?

谷山:確かに私も東証端末は有利だという話は聞いたことがありますが、実際のところよくわかりません。私がディーリングを始めた2010年初めには東証端末はなくなっていましたので。

ただ、それもあってアローヘッド導入後には小手先のテクニックではなく本当に相場を勉強している人しか生き残れない相場になったのかもしれませんね。2010年以降多くのディーラーが職を奪われたという話は色々なところで聞きますから。

証券ディーラーの時代は色々な経験ができて良かったですね。
個人投資家になった今は、当時の手法は使わないですが、その時の経験があったから今があるという気がします。

-個人投資家としての現在はどのような投資をされていますか?

谷山: 朝は7時くらいには起きて朝食を食べた後はトレーダーズウェブなどのウェブサイトを見ます。7時45分頃にはトレーディングツールを立ち上げて前日の海外・為替市場の値動き・ニュースをチェックします。

そして、今日の値動きを頭の中でイメージしてから銘柄の気配チェックを始めます。チェックする銘柄は、多いと150くらいは見ているかもしれません。

この時に、いつもとは違う不自然な買いや売りが入っている銘柄をピックアップしておきます。特に優待系の銘柄だと板が薄いので、妙な指値が入っていると分かるんですよね。特に売りの場合は証券会社の委託の注文だったりするのですが、そういった注文が入っているとミスプライスがついたりすることがあってチャンスの場合が多いですね。

最近の良かった1例としては、アクトコール(6064)があります。
水回りを整える銘柄で民泊関連でもありました。でも、株主優待(100株以上で「パンとエスプレッソと」優待券6,000円相当もしくはクオカード3,000円相当)も良いので、どちらかというと優待銘柄として注目していました。
テーマ株で株主優待の良い銘柄はおもしろいと思います。

5月前半から急騰した後に、板が薄い銘柄なので大きめの売りが入ってくると急落する時があって、2日間くらい安く買える時がありました。3,000円くらいだったのが2,500円まで一気に落ちて、下で指しておくといつの間にか元に戻っている。

これは短期売買ですが、分割する銘柄だったので、買い安心感もありましたね。

■アクトコール (6064)
アクトコール
(5月末に3分割を実施)

またメインで投資する銘柄は、オープンドア(3926)、ダブルスコープ(6619)、ピープル(7865)のような好業績で尚且つ成長力のある銘柄が多いです。昨年はピープルが好調でした。

谷山さん2

個人投資家として始めた最初の頃(2010年頃)はディーラーが好む大型株中心を取引していたのですがあまりうまくいかず、だんだんとテーマ株を取引するようになりました。

そのころから利益が出始めその後はうまい個人投資家さんの様々な手法を勉強しながら、自分の取引手法をつくり上げていきました。

そして、今は割安な優待銘柄と好業績な銘柄をミックスさせた取引に辿り着きました。
(アキュセラなどの銘柄を見ていると、ディーラーだったころの血が騒いで取引したくなるのだとか)

優待の投資法も、昨年の夏ごろまでは権利前に利食う値幅を取る方法を中心に行っていましたが、ブログを書き始めたのを機に優待や配当をもらう投資も研究し始めました。今年の3月では優待と配当だけで30万円分ほど取ることができましたね。

このやり方で利益を出せるようになっていますので、自分のやり方とは違った取引や銘柄はやらないようにしています。良い意味で、“浮気しないこと”が安定した利益を出し続ける為に重要だと思います。

【第2弾】谷山氏の今後の相場展望・注目銘柄
【第3弾】優待投資法と初心者に向けたアドバイス
(取材日:2016年6月3日)

top